今までにない
システム構築を通して
人々の仕事や暮らしを
便利にしていきたい。
- 志和 知子さん
- 日本アイ・ビー・エム株式会社
IBM Cosulting, Hybrid Cloud Transformation IT Architect - 1993年 岩手県立盛岡第三高等学校卒業、東北大学工学部入学。1995年 機械航空工学科(現:機械知能・航空工学科)配属。1997年 同卒業、東北大学大学院工学研究科航空宇宙工学専攻博士課程前期入学。1999年 同修了、日本アイ・ビー・エム株式会社入社。SE部、Global Business Serviceなどを経て現職。
宇宙に思いを馳せた高校時代。宇宙に関わる「ものづくり」を目指して工学部へ。
高校時代は宇宙に興味がありました。宇宙物理学や天文学を学びたいと考えていたのですが、物理があまり得意ではなかったので、自分は理学部には向いていないのではないかな、と。将来就きたかった仕事は宇宙飛行士でしたが、宇宙飛行士ではなくても「何か宇宙に携わる仕事ができないかな」と漠然と思ってました。もともと宇宙飛行士に興味を持ったのも幼い頃に読んだスペースシャトルの話やアポロの月探査の話だったのと、ものづくりが好きだったので、宇宙工学という観点で大学進学を考えるようになり、宇宙工学を学べる大学として東北大学の工学部を見つけて目指すことにしました。
工学部は女性が少ないイメージがありますが、高校も理系クラスで女子がそれほど多くなく、女性が少ないことに対してはあまり不安はありませんでした。入学してみるとやはり女子は少なかったですが、同じ学年の女子だけで工女会(今で言う女子会)と銘打って定期的に集まったり、とても仲が良かったです。
好奇心を満たす温かい研究環境に恵まれ、PCスキルやコミュニケーション力が成長
3年次に機械航空工学科に配属になってから(注:当時は入学時点では学科には分かれておらず、3年次に学科配属となっていた)は、惑星探査機のボイジャーについて調べてまとめた時のことがとても印象に残っています。もともと宇宙に興味があったので調べていて楽しかったというのもありますが、いま思うと、自分が調べた知識を整理してプレゼンテーションする経験や発表の内容を評価いただいたところが、良かった経験として記憶に刻まれているのだと思います。
所属した吉田研究室の研究分野は、人工衛星の姿勢制御とシミュレーション、惑星探査ロボットの制御。私は「惑星探査ローバーのテストベッド開発と走行実験」について研究しました。吉田研究室は、当時できたばかりの研究室で学生が少なかったのですが、研究室内で和気あいあいとしていました。吉田和哉先生のお宅にみんなでお邪魔してクリスマスパーティーをしたのが良い思い出です。オープンキャンパスの時に、見学に来た高校生へ研究室で取り組んでいるシミュレーションの内容を説明して、先生に説明がわかりやすいとほめられたことも印象に残っています。海外の学会に先生と一緒に行かせていただくことが何度かあり、英会話にも力を入れていました。人にわかりやすく説明したり、積極的にいろんな人とすぐに打ち解けられるコミュニケーション能力も身につきました。
今の時代では考えられませんが、私は大学入学までパソコンに触れた経験がありませんでした。研究室でシミュレーションや論文作成などに取り組む中でMacやWindows、Linuxなどに触れ、文書作成やプログラミングなどの技術を身に付けることができました。今、企業の業務のシステム化などでプログラミングやサーバー構築、プレゼンテーションをする仕事が多く、大学時の経験が生かされていると感じます。
システム構築は表には見えないけれど、仕事や暮らしを便利に変える役割がある
大学に入った時は、将来は宇宙に携わることを目指していました。NASDA(宇宙開発事業団[当時]。現在のJAXA(宇宙航空研究開発機構)の前身の1つ)などへの就活も、もっとチャレンジすればよかったなと思っています。実際には、先輩が使っているパソコンがスペースシャトルで宇宙に行ったとか、パソコンの設計・製造に携わっている先輩の話を聞いてものづくりに携わる仕事がしたいと思い、現在の会社を選びました。
入社後は私が製造に興味があるということで、製造業のお客様のシステムを構築する部署に配属されました。その後現在に至るまで、お客様の業種によらず、いろいろな企業のシステムを構築する仕事をしています。
私が入社した1999年頃は、まだ企業の業務もそれほどシステム化されていませんでした。私たちのようなシステム構築のプロが間に入って企業の業務をシステム化することでその企業の業務効率化などのメリットが生まれますが、その企業へのメリットだけでなく、ひいてはその企業のユーザーである一般の人たちにも役に立つ仕組みだったりすると、とりわけやりがいを感じます。日々の生活の裏に自分たちの作り上げたものが使われていてそれが便利だと想像すると面白いな、と思います。
これまでは企業対象でシステム構築を行ってきましたが、当社では大学の研究のお手伝いをするプロジェクトもあるので、今後はそういった取り組みや吉田先生が携われている宇宙ビジネスに関わる機会があれば挑戦してみたいと思っています。
企業で進む様々な両立サポート。コロナ後はほぼ在宅勤務に。
この仕事は、コロナ前まではお客様先での勤務がほとんどでした。プロジェクトによっては地方へ飛行機で日帰りしたり、数日出張することもありました。最近はどのお客様もリモート会議ができるシステムが普及しており、私も現在はほぼ在宅勤務をしています。勤務時間は裁量勤務制ですが、だいたい9~18時が主です。仕事がプロジェクト単位のため、プロジェクトメンバーと密にコミュニケーションをとります。
当社では、以前からリモートでも仕事ができる環境が整っていました。育児だけでなく介護など様々な理由で在宅勤務が必要な人向けの対応が進んでいたと思います。また、産前産後の休暇はもちろん、育児休職は子どもが2歳になるまで取得可能で、育児休職中に第2子を妊娠し、そのまま第2子の育児休職を経てから復帰するという人も私の周りにいました。職場に戻ってからも未就学児がいる場合など短時間勤務も可能です。
さらに、育児特別休暇や子どもや家族の看護のための看護休暇、保育園の送迎のための一時離席や遅出・早退ができる制度、ベビーシッターの割引など、仕事と育児の両立をサポートする制度が数多くあります。最近では男性社員でも育児休職や産後パパ育休を取得したという話を多く耳にします。また、職場環境や福利厚生とは異なりますが、Familydayといって会社に家族を招待して、普段仕事をしている環境を見せるようなイベントも開催されています。
当社には子育てを経験した女性で、管理職やさらに上位のマネジメント職を担っている方が、大勢いらっしゃいます。母親の辛さや、苦労を実際に経験してきた方が社内にいることで、制度や仕組みだけではなく、仕事を続けられる空気感、カルチャーが作られているような気がします。在宅でのWeb会議に子どもが入ってきたり、子どもが急に発熱したり、そういった何かあった時に、同じ子育て世代として、あるいは子育て経験者として理解してくれる方が周囲にいるというのは、心の余裕につながります。確かに仕事の内容によっては結婚や出産後に続けるのが難しい職場もあるかもしれませんが、当社の場合は社内での異動希望や職種変更なども可能なので、無理のない働き方を選択することができます。
私もプライベートでは高2女子と中2男子の子どもがいて、上の子と一緒に推し活をしたり、下の子と一緒にe-sports観戦に行ったりしています。仕事と家庭の両立で心掛けているのは、無理をしないこと。どうしても子どもが小さいうちは仕事ができる量も限られてしまいます。育児は初めてのことだらけだと思うので、子育ても仕事も抱え込まず、協力が頼めるところにはどんどん協力してもらうことが大事だと思います。
(2023年3月)
工学部だからといってみんながみんなロボットを作ったりしているわけではありません。人の役に立つ「もの」や「仕組み」を創り出すことができますし、「あんなことができたらいいな」といった漠然としたものを実現させることもできます。工学部からは、研究開発の分野に進んで商品や製品の開発を行う道もありますし、私のようにシステムを作って世の中の役に立つ道もあります。活躍の場は多々ありますよ。
工学部とひと言で言っても、学科が違えば研究する内容も異なります。東北大学の工学部は様々な学科があり、多種多様な選択肢があることが魅力だと思います。
実は理系女子の中でも工学部は就職に有利だと思います。学部の中でも女子が少ないため、みんなに優しくしてもらえます。サークルに入れば他の学部の人とも知り合えますし、少ないなりに団結力ができて楽しく過ごせます。ご心配なさらず。