東北大×工学×女性×キャリア 未来への挑戦

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安全で住みやすい
まちづくりに関わりたい。

柳田 眞由美さん
国土交通省
現在、厚木市役所 理事兼国県道調整担当部長
東北大学工学部人間環境系(現:建築・社会環境工学科)入学。土木工学科卒業、東北大学大学院情報科学研究科博士課程前期修了。国土交通省に入省。地方整備局国道事務所、本省道路局などを経て2017年 国土交通省大臣官房技術調査課課長補佐、2018年 環境省水・大気環境局自動車環境対策課課長補佐、2020年 国土交通省道路局環境安全防災課道路交通安全対策室企画専門官を歴任し、2022年 厚木市役所に出向し、理事兼国県道調整担当部長。

実社会で役立ちたいとの思いで進学。
自分に向き合うこと、そして、浅く広い交友関係と深く密な親友関係を築く。

子どもの頃から理数系の意識がありました。理数系は理学系、工学系、医学系などに大別されますが、進路選びの際に漠然と抱いていたのは「社会で何かを実現することで、役に立ちたい」という思い。そのためなんとなく工学部に関心があり、学科については、専門性より「総合的な工学系」に惹かれていました。「国立」「工学部の実力・実績」「実家からの距離」「知見や交友関係を広げるために総合大学」などをポイントに、自分の成績を踏まえつつ、家族や高校の先生からのアドバイスも参考にして、東北大学の工学部に決めました。

入学し、最初は他の学部や学科と一緒の全学教育の授業だったこともあり、想像以上に女性が多くいました。学年が上がり、土木と建築の専門に分かれた際には土木工学科の女性は少なかったですが、個性豊かな「土木女子」メンバーで楽しく過ごしていました。浅く広い交友関係と、深く密な親友関係とを築き、さらに一人の時間も大切にし、自分に向き合うこともでき、本当に良かったと思います。子どもから社会人への成長過程の最終段階として大事な時期であるため、自立とともに精神的にも成長するために、このバランスが大事だったと思います。学業以外ではアルバイトを通じて経験値が高まり、趣味で旅行にもたくさん出かけました。さらに、一人暮らしで家族との距離ができたことで、親を一社会人として認識し、ありがたさや尊敬の気持ちを抱くようになりました。

親のように慕える偉大な恩師との出会い。インフラの考え方について肌で感じた経験は大きな財産。

高校までの公式を覚えるような机上の学習から踏み込んで、学部時代は理論をじっくり学ぶことができ、それによって表面上の理解から、さらに深く理解できるようになりました。高校生までに習った知識が、実社会でどのように応用されているかが分かるようになる過程は面白かったです。

3年次から土木計画学を専攻し、道路整備などの公共事業の評価手法の基礎となる経済学も勉強しました。経済学は文系分野なので理系の学生が勉強することは珍しいのですが、人・企業の行動を数学で表現できる学問には感銘を受けました。研究室でご指導いただいた森杉壽芳先生は世界的に著名な土木計画学の先生でしたが、同時に親のように慕える人間味ある教育者でした。「あなたは、自分のことを馬鹿だ、馬鹿だと思いながら、粘り強くがんばる。僕も同じ」「え?!世界の森杉と言われる先生もそうなのですか?」「そうだよ、若い頃からそうやってきた。それが君の長所だよ」と応援いただいたのは今でも大事に残っています。また、河野達仁先生からも、経済学の基本から研究にあたっての筋道の立った考え方まで丁寧にご指導頂き、非常に勉強になりました。

土木で対象とする公共施設は社会基盤、インフラとも言い、具体的には建物、道路、ダム、河川、上下水、鉄道などが挙げられ、それらの基盤となる構造力学、土質、計画論、更には環境などを学びました。市民や企業の生活には欠かせない、しかし毎日の暮らしの中に馴染みすぎてありがたみを感じないものとも言えます。そのようなものを研究者として日々追及する先生方も、まさに縁の下の力持ちのような考え方の先生が多く、授業に感銘することが多かったです。土木はお金をかけてスペックが良いもの、華美なものを追求するのではなく、最低限の社会的費用で幅広い人に最大の貢献をするスタンスが大切。その考え方について直接に教わるものではなく、肌で感じることができた経験は大きな財産になりました。

人々の暮らしの安全や快適さの向上のために働きたい。その思いから土木職の公務員に。

土木工学に進むと主な就職先は、公務員、建設会社、コンサルタントです。大学で学ぶうちに、公的部門で社会システムの役に立ちたい、特に、人々や企業の日々の活動を支えるインフラをより良いものにしたい」と考えるようになり、人々が便利で快適な毎日になったなとふと感じて頂けるような、質の高い日常の提供に携わりたいと考え、土木系の公務員を志すようになりました。

実は、地方公務員の試験も受験しました。国家公務員は全国に事務所があるため、家庭を持った時に転勤を懸念したためです。しかし色々と悩み、大学の先生、家族、友だちにも相談をした結果、「消極的な理由で選ぶのではなく、やってみたいこと、なりたい自分に挑戦する」というスタンスで臨むことにしました。この考えは、よかったと思います。

社会人になって分かるのは、どの職場も学生からは見えない部分があり、一長一短あります。また、働き方自体はある程度変えることができます。特に昨今は、テレワーク、時差出勤など、多様性を受け入れてくれる社会となっています。ネガティブな一面を基に志望先を選ぶのではなく、やりたいことを第一に選ぶことが大事だと思います。

国土交通省の技術職として、強い専門性と幅広さを構築し続けていきたい。

国土交通省の土木系職員は、東京・霞ヶ関の本省、地方整備局、全国各地の現場の事務所を行き来しながらキャリアアップしていきます。私は本省では国際分野での技術支援、交通安全施策を、地方整備局では防災対策とりまとめ、工事の入札契約制度を、現場の事務所では高速道路の計画、交通安全対策の調査・設計・工事などを担当。幅広い業務を経験することができ、現場で直接的にやりがいを感じつつ、現場での課題を本省で政策に生かすことができてとても良い経験になっています。

前小林市長の県道整備の視察に同行

現在は厚木市役所に出向。厚木市は、前小林市長が現地対話主義・市民協働を掲げ、市民の声を踏まえて前向きな政策を積極的に進め、神奈川県内で財政力指数1位、共働き子育て環境1位。理事という役職のため、市の政策決定に関わることもでき、市政全般を学び、女性の視点からも意見を述べることもできます。また、国道や県道のバイパス等の道路整備や改良に関する国や県との調整などを担当。市役所は市民との距離が近く、国や県の立場ではなく、地域の立場から国や県の事業に携わる仕事は充実感があります。

国の機関との打ち合わせ

行政は、基本的に組織体で動きます。上司に相談しながら、同僚と連携して仕事に取り組みます。責任等の大きなプレッシャーもやりがいに感じながら仕事ができ、チームで働く楽しさや、現場での対策が完成して便利になった社会を目の当たりにする達成感は何物にも代えがいものがあります。

国家公務員は、女性参画を先導する立場。多様な働き方で自分らしくキャリアアップ。

市議会での発言

プライベートでは結婚をして子どもに恵まれ、公務員、主婦、母親…。それぞれでは到底100点は取れませんが、足し合わせたらそれなりの点数になるのではないかと、それぞれの合格ラインを低くして毎日に励んでいます。

国家公務員は女性の参画を進める立場で、子育て世代の働きやすさの改善を図るために様々な制度があります。私自身が活用してきたのは、産休・育休、フレックス制度(時差出勤、休暇時間短縮)、テレワークなど。育休復帰の後は定時退庁しやすい部署の配属を希望することもでき、テレワークも積極的に使える環境が整い、最近は男性職員の育児休暇も当たり前になり、小さなお子さんを持つ共働き職員は画期的に働きやすくなりました。育休から復帰しても、子どもが急に熱をだせば、2,3日休まざるを得ない状況もあります。家族で調整しつつも、そのような制度は非常に有効でした。また、制度だけではなく組織の中でお互いにフォローしあうという風潮もあり、働きやすい環境に感謝しています。もちろん、仕事をしっかりできるときはしっかりと、メリハリを持って仕事しています。

高校生のあなたへ

高校生の皆さんにとっての将来は、広く明るく様々な選択肢があるかと思います。その中で、ご自身のやりたいこと、好きなこと、なりたい自分を大切に考えていただきたいと思います。将来、何かを通じて役に立っていきたい。工学部では、その何かがきっと見つかると思います。ネガティブな情報ではなく、ポジティブな考えで臨んでいただきたいと思います。

保護者の皆さまへ

保護者の皆さまから見ると、工学部やその先の就職先でも、女性の少ない環境などについてご心配されるかもしれませんが、裏をかえせば大事にされることもありますし、女性ならではのチャンスもあると思います。

東北大学工学部では、学業のみではなく学生時代にしかできないこと、自立に向けて必要なステップを経験することができました。お子様方の考えを温かく応援していただければと存じます。

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