東北大×工学×女性×キャリア 未来への挑戦

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人の役に立つ
新たなモノづくりをしたい!

長崎 裕子さん
花王株式会社 スキンケア研究所
2009年 宮城県第二女子高等学校卒業、東北大学工学部化学・バイオ工学科入学。在学中はソフトテニス部で活躍。2013年 東北大学大学院環境科学研究科 博士課程前期入学。2015年に博士課程前期を修了、花王株式会社に入社。現在はスキンケア研究所(すみだ)に勤務。

「人や社会の役に立つ楽しそうなモノづくりをやってる!」と工学部へ。

中学・高校とソフトテニス部に所属し、高校では東北大会に出場するほど熱中していました。部活を引退して、いざ受験となった時、文系科目よりも数学や化学・物理が得意だったので、理系分野に進もうと考えました。将来の職業については親の勧めもあり、「資格を取って生かせる薬剤師などが良いかな」と漠然と描いていたくらいで、具体的に定まっていませんでした。

まず、地元の国立大で父の出身大学でもあったので、東北大学を目指そうと考えました。最初は薬学部を受けようと思いましたが、部活の顧問に工学部のAO入試を勧められたのがきっかけで工学部のオープンキャンパスに参加し、「人や社会の役に立つ楽しそうなモノづくりをやっている!」と実感。はきはきと説明をしてくださるかっこいい女性の先輩方も印象的で、そこで工学部を目指そうと決めました。

女子高に通っていた私は正直、男子ばかりの工学部に入学するのは少し不安がありました。しかし、化学・バイオ工学科には同学年に少ないながらも20人ほど女性がいて、同性同士すぐに仲良くなれました。女性の数が少ない分、先生や先輩に覚えてもらいやすかった点も印象に残っています。また、当たり前ながら勉強や研究をする上では男女は関係なく、対等に切磋琢磨しながら取り組める環境でした。

部活と勉強に夢中だった学部時代。大学院では未知のテーマに自ら挑む面白さを経験。

大学でもソフトテニス部に所属。土日もほぼ終日練習で、男子と同じメニューの練習をこなすほどでした。その中にあっても授業には全て出席しましたが、一番前の席でウトウトしてしまったことは今も苦い思い出です。とはいえ、テスト勉強は本気で頑張りました。

部活動では年に一度、旧帝大が集まる七大戦という大会があり、他の大学の人とも交流できて楽しかったです。当時の部活のメンバーとは今もたまに集まり、テニスをしたりしています。

学部4年次より所属した吉岡研究室の研究分野は新規化学リサイクルプロセスの開発でした。私が選んだ研究テーマは、求核置換反応による塩素化ポリ塩化ビニル(CPVC)の化学修飾。なんだか難しそうなテーマですが、これはCPVCの新たなリサイクル方法を探す研究。塩素を他の有機化合物と置き換えることで、親水性や可塑性など新たな機能を付け加えるアップグレードリサイクルについて模索しました。

大学院では、まだ誰もやったとこのない研究を、自分で進めていかなければいけません。自分で論文を調べ、やるべきことを考え、実験結果から考察して次のステップへ。与えれられた課題をこなす学びが中心だった学部とは違って、自ら探究し、推進する力が身についたと思います。また、学会で発表する機会もあり、資料作りや発表も上達しました。

「人のために新しいモノづくりができる」と企業研究者の仕事へ。自分が携わった製品を使って喜んでもらえることがやりがい。

就職にあたっては、研究者として「人のために新しいモノづくりができる仕事につきたい」と考え、いろいろな化学メーカーを見た中で、花王は新しいモノづくりで多くの人の生活を豊かにする仕事ができる職場だと感じました。インターンシップに参加し、そこで働く先輩方が楽しそうに真剣に仕事に取り組む姿を見て、私もここで働きたいと思いました。

入社後は洗顔料の商品開発を行い、ビオレの洗顔料の改良商品を世の中に送り出しました。同時に洗顔料に関する基盤研究も行っていました。その後はシートメイク落としの新商品開発プロジェクトに携わり、現在はメイク落としの基盤研究を行っています。

この仕事のやりがいは、自分が携わった製品をお客様が使って喜んでいただけること。自分がこだわった点をお客様に感じてもらえて、「こんなことに困っていたけどこの商品でそれが解消された」などの話を聞けると、自分の仕事がお客様の生活にお役立ちできたと実感でき、頑張って商品を作って良かったなと感じます。さらに、同じ仕事のルーティーンではなく、日々新しい目標にチャレンジできるのも研究職の面白さです。

女性として普段からメイク落としを使用しているからこそ、お客様が感じているであろう不満、不充足に共感しながら考えることができています。まだまだ研究者としても商品開発者としても未熟ですが、今の場所で経験を積み、人々の生活を豊かにする商品開発を続けたいと思っています。

1歳の息子の子育て真っ最中。同僚と働く時間が気分転換に。

数年前に大学のソフトテニス部の同期と結婚し、1歳の息子の子育て真っ最中です。育休を経て復帰をしたばかりですが、日々心掛けているのは、仕事と子育て、どちらも頑張りすぎないこと。ただ、どちらかを言い訳にして人に迷惑をかけないようにだけ留意しています。もちろん子どもの体調や急な呼び出し等で職場に迷惑をかけることはありますが、なるべくそうならないように締め切りのある仕事は早めに終わらせ、逐一周りと情報共有しながら仕事を進めるようにしています。

私の主な業務は実験で、新しいメイク落としを配合してその効果を確かめたり、測定機器でデータを取ったりしています。結果はこまめに上司とディスカッションし、同僚とも雑談ベースで情報交換しながら仕事を進めています。

基本的には研究所での仕事になりますが、週に1度程度はデータ整理等で在宅勤務をしています。裁量労働制で子育て中ということもあり、9:00~16:30で仕事をすることが多いです。子育て中でも仕事が気分転換になっていて、会社で同僚と会話をしながら働ける時間はとても楽しいです。現在の職場は女性が半分以上ととても多く、子育て中のお母さんもたくさんいるので、気軽に相談できるのもありがたいです。

多くの仲間から刺激を受けた東北大時代。今は決まってなくても、やりたいことが必ず見つかる。

在学中はたくさんの仲間に出会いました。各々が勉強、アルバイト、遊び、部活と、とてもパワフルに過ごし、好きなことには一生懸命で、努力を惜しまない人ばかり。そんな環境の中で自分も頑張ろうという刺激を受け、成長することができました。

また、入学時は私も含めて多くの仲間が専攻や進路をはっきりと決めていませんでしたが、それでも大丈夫。工学部の1つの学科でも選択肢はとても多くあり、基礎を幅広く学んでから、自分が取り組みたい分野を決めることができます。東北大学の工学部の研究室では本当にさまざまな研究をしていて、そのどれもが人のためになる新しい研究です。まだ具体的にやりたいことが決まってなくても、なんとなく興味のある学科に行けば、その学科の中で幅広く学ぶことができ、その上で、やりたいことが必ず見つかると思います。実際に私も、東北大学工学部化学・バイオ工学科で応用化学、化学工学、バイオ工学など幅広く学べたことが大きな財産となり、実験結果を考察する上で様々な視点から見ることができ、大変役に立っています。

高校生のあなたへ

工学部という名前から敬遠しがちかもしれませんが、「人の役に立つモノづくりに携わりたい」という方はぜひ進学をおすすめします。工学部へ進学して研究者や技術者として企業で仕事をすることは、現代において男女の垣根はないと思います。

研究や技術開発は女性が続けやすい仕事だと思います。出張も少なく、異動もあまり多くないのがその理由です。また、お客様と直接かかわることが少ないので、時間の融通も効きやすいです。

保護者の皆さまへ

工学部に進学するのであれば、大学院(博士課程前期)まで行くことでよりその先の選択肢が広がるので、学部4年+修士2年の合計6年間行くものだと考えていただいた方が良いです。女性こそ専門的な知識をつけることで、出産後も働き続けやすいと思います。

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