淑徳与野中学・高等学校で出張講義を実施しました(10/9)
2025.10.28

10月9日(火)に淑徳与野中学・高等学校で出張講義を行いました。中学3年生~高校3年生の13名が参加しました。
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講師: 東北大学大学院環境科学研究科 松八重 一代 教授
タイトル: 「製品の本当の『重さ』って何だろう?」
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講義では、東北大学工学部と、鉱物資源の観点から工学・環境科学を紹介しました。身の回りの工業製品に使われる鉱物資源がどこでどのように採掘・精錬されているか、また鉱物資源の需要の高まりから、森林破壊などの環境問題や現場で働く人たちの人権問題といった様々な問題が起きていることを説明しました。自動車を例に、資源の利用とそこに潜む環境リスクを具体的に考え、解析するための研究を解説しました。講義終了後にも生徒から積極的に質問があり、活発な交流を行いました。



<質疑応答>
Q. 鉱山採掘活動で、環境への影響や社会的影響が大きいと感じられた場所はありますか?
A. これまでに訪問した場所はいずれも比較的大きな会社が運営し、安全や環境に配慮されているものばかりでしたが、学生が調査に行った鉱山では、写真で見る限り、安全や人権などへの懸念を感じられた場所もありました。
Q. 海外出張を行う際に、大変な点は何ですか?
A. トイレや飲み水などの水回りには特に注意を払います。
Q. 研究をおこなった結果の出力で、何か世の中に貢献した製品などはありますか?
A. 現在取り組んでいる全世界の鉱山データベースを核として、今後の起業に向けて準備中です。
<参加した生徒の感想>
- 白金を取るのに、欲しい量の54万倍以上の土を掘らなくてはならないということに驚きました。 電気自動車1トン作るのに、70トン以上かかっているということに衝撃を受けたと同時に、とても大変そうだなと思いました。発展途上国では貧しい人達が水銀を使って採掘することで農業をする人が減ってしまい、工業的にも産業的にも悪い影響になってしまっているということが分かりました。
- 私はカーボンニュートラルについて調べていて、脱炭素を達成することによって地球の環境がよくなると考えていたのですが、今回の講座を通してメリットだけではないことがわかりました。私はすでに材料が準備されている状態からの技術の開発しか考えてこず、鉱物の採掘や、使える金属にするまでの過程のことを一度も気にしたことがありませんでした。思ったよりも環境への負荷がかかっていることを知り、驚きました。
私の夢は、環境問題を解決していくための技術開発に携わることなので、さらに深く研究をし、実現のため努力したいと思いました。私は特に技術開発の中でも、環境問題を解決する技術に必要な材料・素材の研究をしたいと前から考えていたので、東北大学は私の学びたいことと非常にあっていると思い、環境科学の大学院に進学したいと考えています。学部からの入学は私には難しいと思っていたので、他大学から大学院に進学してくる人も多いと知り、希望が持てました。
本当に学びになり、自分の将来を深く考えられる講座をありがとうございました。
- 社会科の学習では、どこの国の鉱物生産量が多いなと思っていただけでしたが、どうやって、どんな人が生産しているのかを知り、興味が湧いたとともに、そこから発生する問題も解決しなければならないのだと感じました。物事の表面を知るだけでなく、裏側も知ることで新たな問題解決に繋がるのだと思い、これから先は色々な視点を持って学習していきたいと思います。
- 「製品の本当の重さ」という単語に興味を惹かれ、講座を取ってみました。もともと環境分野に興味があり、今日の講座を聞いてさらに興味が深まりました。私もそのような研究をしてみたい!と思う事ができるくらい面白くて楽しい講座でした。ありがとうございます。
ただ「本当の重さ」についてだけでなく、労働面・環境面など様々な視点から講義をしてくれました。私の知っている重さだけではない、その背景にある「重さ」を知る事が出来て、知らないことを知る楽しさを学ぶ事が出来ました。
今まで水素自動車や電気自動車が環境にいいと思っていましたが、TMR(関与物質総量)を通して考えると水素自動車よりもガソリン自動車の方が、採掘など製品ができるまでの全体の負担が小さいと知り、固定概念から抜け出す事ができたと思います。水素自動車の技術開発でTMRがどれくらい低下することができるのか、これからが楽しみです。
今目の前にある製品がどのような背景で作られて、金属鉱物が用いられ、TMRを通して見ても環境に優しいと言えるのかこれからの毎日が楽しくなれると思います。
- 普段乗っている車や電気自動車に使われる部品ができるまでに必要な鉄鉱石や、それを得るために掘る量など、想像以上で驚きました。また一度に掘ったものも、鉱物によってそれに含まれる量が異なることにも驚きました。
また、質問で聞いた鉱物を掘る方法が衝撃的で、確かに改善していくべきだと思いました。今回の講義で、世界の採掘方法や環境、様々なものに使われる鉱石の量など、今まで知らなかったことを知ることができてよかったです。より目指している学部に興味を持つことができました。
- インフォーマルな採掘している鉱山が多くあって、そこで働いている人の健康被害やその土地の環境破壊が行われていることについて詳しく聞いたことはなかったので、水銀をあんなに近くで使っていることなどにとても衝撃を受けました。また、環境学の講義を受けたことがなかったのでとても面白かったです。
- 一見環境に良さそうな製品も、実は見えていないところで意外と環境に負荷をかけているというお話を聞いて、誰かに言われるがまま環境に良さそうというだけで製品を選ぶのではなく、自分でその背景まで見て考えた上で選べるようになりたいと思いました。
ご参加いただき、ありがとうございました。







