東北大×工学×女性×キャリア 未来への挑戦

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震災で再認識した
ライフラインの重要性。
今、インフラ開発の仕事が
大きなやりがいに。

長谷川 美佳さん
パシフィックコンサルタンツ株式会社 設備エンジニアリング部
2010年 宮城県仙台第二高等学校卒業、東北大学工学部情報知能システム総合学科(現:電気情報物理工学科)入学。2014年 同卒業、東北大学大学院工学研究科電子工学専攻博士課程前期入学。2016年 同修了、パシフィックコンサルタンツ株式会社に入社。設備エンジニアリング部、国際プロジェクト企画部出向を経て、2021年より現在の設備エンジニアリング部に再び勤務。

東北大学のオープンキャンパスに参加し、工学が社会を支えることを実感。

高校時代はいろいろなことに興味があり、なかなか一つに絞りきれませんでした。元々は国土地理院で地図を作ることが夢でしたが、社会に直接的に貢献できる工学分野全般に視野を広げ、進路や将来の職業について考えていました。

そんな時、東北大学のオープンキャンパスで医工学や電力工学等、様々な分野を知り、工学分野を学ぶことで当時の想像を超えた多くの分野で、社会を支える貢献ができると感じました。どの分野も、社会インフラから人々の健康・生命まで、社会を支える重要な役割を担えることに感銘を受けたのを覚えています。また、キャンパスの清潔感と接した教員や学生の方々の人柄の良さ、世界へ発信されている研究開発成果に触れ、東北大学工学部を目指そうと思いました。

入学した時は「女子が少なくて学部の雰囲気になじめなかったらどうしよう」と不安でしたが、学科の同級生が男女合わせて200人以上いたので、授業や実験で縁のあった人たちと交流していく形で、男女問わず交友関係を広げることができました。女性の割合は10%以下でしたが、人数が少ないことで逆にすぐに知り合いになれたので安心しました。

海外渡航やビジネスコンテストなど、「学生時代しかできないこと」のチャレンジを謳歌。

学生時代しかできないと考えて、ホームステイやサマースクールへの参加、学会発表や旅行を通じた海外渡航に度々挑戦しました。生まれてから大学までずっと宮城県でしか暮らしたことがなかったので、海外での生活は面白いできごとの連続でとても楽しかったです。

中でも成長のきっかけになったのは、オーストラリアのシドニー大学・ニューサウスウェールズ大学でのサマースクール。学内のグローバルラーニングセンターでアレンジしていたもので、1か月半を通じて全く知らない環境で、必要な情報やものを集めたり、知っている英単語を使って必要なコミュニケーションに挑戦し続け、いかなる状況でも自分でどうにか切り抜けるための機転や精神力が鍛えられました。

また、同じ学部で仲の良かった女子4人組で、日本経済新聞主催のビジネスコンテストに参加。書類選考を通過して本選にて発表したことも思い出深いです。「植物に使える接着剤」をテーマに、その必要性や材料の提案、展望について、材料科学総合学科の先生に相談に乗っていただきながら提案資料を作り、東北大学工学部には様々な分野を学べる環境があることを再認識しました。こうした活動を通じて、女子4人組の仲は一層深まり、大学院を卒業して約7年の今でも、東京で定期的に食事や遊びに行っています。

研究室は半導体の電子物性の研究室に所属。金属電極とグラフェンの接触抵抗の低減にむけた物性の解明に取り組みました。大学院時代は、東北大学サイエンス・エンジェル(現:東北大学サイエンス・アンバサダー)も務め、小中高校生に対して科学の魅力を伝える活動にも携わりました。

東日本大震災を経験し、ライフラインの重要性を再認識。
インフラの計画や設計を担う「建設コンサルタント」の道へ。

大学に入った時は、工学で命を直接救える医工学を第一志望として進路を考えていましたが、細胞、動物といった生命体に実験や研究で触れることになじめませんでした。そんな中、大学1年生の終わりに東日本大震災が発生。宮城県内の実家も1か月ほどライフラインが復旧しませんでした。電力が復旧して部屋の明かりがついたとき、不安だった気持ちから一気に安心することができ、ライフラインが物理的にも精神的にも大きく人々の生活に影響を与えていることを再認識しました。この時の経験を通じてライフラインを支えられる人になりたいと強く感じました。

就職活動の際は、特定の製品の研究・開発ではなく、より社会に広い関わりを感じられる仕事にあこがれました。情報収集の際に偶然、インフラの計画や設計を担う「建設コンサルタント」業界に出会い、その果たす役割に魅力を感じて、現在の会社を選びました。

日本のインフラ技術を海外で展開する仕事を担当。
将来は海外プロジェクトを指揮できる存在になりたい。

海外プロジェクトの現地調査

入社して3年半は設備エンジニアリング部に所属。国内の鉄道や都内再開発事業の、電気・通信設備の計画・設計・施工管理を担当しました。鉄道や駅に接続する地下広場は、人々の動線、かつ活動の場として、重要なインフラの役割を担っています。大学で電気工学関係を学んだ経験をベースに社会インフラに必要とされる機能を計画し、形にする役割を果たしました。

その後、海外営業の部署(国際プロジェクト企画部)に2年間出向することに。電気技術や設備の枠にとらわれず、海外インフラ事業に対する営業活動を担当しました。新興国や途上国を中心に、日本のインフラ技術をその国でどのように適用できるかを、相手のニーズと対話しつつ、技術面やコスト面から検討を重ね、具体策を提案する仕事。自ら希望したキャリアチェンジではなかったものの、大学時代に積んだ海外経験を生かして、新たな環境で一から全く異なる経験を積んだことで、自分自身の成長につながったと思います。

出向期間2年が終わり、再び設備エンジニアリング部に戻り、現在は海外営業の経験を生かして、海外インフラ事業およびインバウンド事業(海外のクライアントが日本にインフラ施設等をつくる事業)を電気・通信設備の担当として遂行しています。具体的なプロジェクトとしては、南アジアでの洪水対策施設の検討、アフリカでの空港施設の調査・検討、海外クライアントの日本でのデータセンター建設の支援、などで、主にエネルギー・電気・通信設備のパートを担当しています。昨年は、3か国、年間で半年近く、海外出張に出かけました。

インフラ開発には多くのステークホルダー(国・自治体・民間企業・住民)との合意形成が必要で苦労も多いのですが、実際に計画が完遂し、インフラが使われる経験をすると、大きな達成感があります。インフラ開発に携われることが、大きなやりがいとなっています。

現在は海外インフラ開発において担当者としての参画がメインですが、将来的にはプロジェクトマネージャーとして海外プロジェクトを指揮できるコンサルタントになることが目標。そのためにも、技術面とマネジメント面の両方の知識と経験を積み上げていきたいと考えています。

職場環境の整備でライフステージに応じた働き方が可能に。
プライベートと仕事の両立を実現。

最近では、育休や時短勤務は男女問わず必要な人が取得できるよう、会社としても制度設計や運用方針を慎重に推進していて、個人やライフステージに応じた働き方ができるよう、職場環境の整備が進んでいると感じています。

私の場合、事実婚の夫とは現在の勤務地が離れているため、週末婚状態なのですが、会社で遠隔地勤務制度を試行し、導入を検討しているため、これを活用することも考えています。また、健康第一なので、食事や睡眠、娯楽の時間を十分に確保し、自分のリフレッシュ方法を多く持っておくことも大切にしています。週末は登山やキックボクシング、ランニング、温泉やサウナに行ったり、大学時代の友人たちと会ったり。家族や友人たちと良好な関係を築くことは、プライベートと仕事を両立させる上で重要だと思っています。

高校生のあなたへ

工学分野は社会に貢献している実感が得られやすい分野と感じます。仕事はもちろん大変なことも多いですが、自分が携わっているものの社会的重要性を感じられれば乗り越えられる困難もあると思います。まずは「やりがい」という観点での将来選択をおすすめします。

保護者の皆さまへ

ライフステージに応じた働き方が選べる職業・働き先が増えてきたと感じます。女性がまだまだ少数派の工学のような分野も含めて、本人が挑戦したいと思う道を応援してあげてください。

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